
食品への異物混入のニュースは、消費者に不安を与え、企業の信頼を大きく損ないます。食品業界にとって、異物混入の防止と早期発見は避けて通れない経営課題です。
この記事では、異物混入検査について基礎から実践まで分かりやすく解説します。
食品業界における異物混入検査とは
食品業界における異物混入検査とは、製造・加工・流通の各工程で、食品中に本来存在しない物質が混入していないかを確認し、排除する活動を指します。消費者の健康と安全を守り、食品の品質を確保するために不可欠なプロセスであり、食品メーカーや飲食店にとって最重要課題の一つです。
異物混入検査の目的
食品の異物混入検査は、単に異物を取り除くだけでなく、多岐にわたる重要な目的を持っています。
消費者の健康と安全の確保
異物による窒息、怪我、食中毒などの健康被害を未然に防ぎます。特にアレルギー物質の混入は重篤な健康被害につながるため、厳重な管理が求められます。
企業ブランド価値の維持と向上
異物混入は企業の信頼を大きく損ない、ブランドイメージの失墜につながります。検査を徹底することで、消費者の信頼を獲得し、企業の社会的責任を果たします。
製造物責任法(PL法)への対応
異物混入によって消費者に損害が生じた場合、製造者は賠償責任を負う可能性があります。適切な検査体制は、法的リスクを低減するために重要です。
食品衛生法やHACCP制度への準拠
食品衛生法に基づく衛生管理や、国際的な食品安全マネジメントシステムであるHACCP(ハサップ)制度において、異物混入対策は必須要件です。これにより、食品の安全性を客観的に証明できます。
リコールや回収費用の回避
異物混入が発覚した場合、製品のリコールや回収が必要となり、多大な費用と労力が発生します。事前の検査でこれを防ぐことができます。
主な異物混入検査方法
食品に混入する可能性のある異物は多種多様です。そのため、それぞれの特性に応じた様々な検査方法が用いられています。
目視検査
人間の目で直接、製品や製造ライン、原材料に異物がないかを確認する方法です。比較的安価で導入しやすい反面、検査員の熟練度や集中力に依存します。また、微細な異物や製品内部の異物の発見は困難です。
金属検出機
電磁誘導の原理を利用し、食品中の金属異物を検出する装置です。鉄、非鉄金属(アルミ、銅など)、ステンレスといった金属の種類を問わず検出できます。ただし、製品の塩分濃度や水分量によって検出感度が変動することがあります。
X線検査機
X線を透過させることで、食品の内部に存在する異物を画像として検出する装置です。金属だけでなく、石、ガラス、骨、硬質プラスチックなど、密度差のある様々な異物の検出に有効です。製品の形状や包装に左右されにくい利点があります。
色彩選別機
カメラで製品の色や形状を識別し、基準と異なるものを自動で排除する装置です。米や豆、ナッツなどの農産物加工品において、異色粒や変形粒、石などの異物除去に用いられます。
ふるい・フィルター
特定の網目や孔のサイズを持つふるいやフィルターを通して、製品よりも大きな異物を物理的に除去する方法です。粉体や液体食品の製造工程で広く利用されます。
磁石
強力な磁石を製品が通過する箇所に設置し、鉄粉などの磁性を持つ金属異物を吸着・除去する方法です。主に粉末状の原材料や製品の一次的な異物除去に効果を発揮します。
風力選別
風の力を用いて、製品よりも軽い異物(例えば、穀物中の殻や茎など)を吹き飛ばして除去する方法です。
画像処理検査
高解像度カメラと画像解析ソフトウェアを組み合わせ、製品の表面の異物や欠陥を自動で検出する方法です。AI(人工知能)を活用することで、より高精度な判別が可能になっています。
官能検査
人間の五感(視覚、嗅覚、味覚、触覚)を用いて、食品の異常を評価する方法です。異物の有無、異臭、異味、異物感などを確認します。特に、見た目では分からない微細な異物や、食感に影響を与える異物の発見に有効です。
異物混入のリスクと影響
食品への異物混入は、消費者と企業の双方に甚大なリスクと悪影響をもたらします。その影響は単なる金銭的な損失に留まらず、企業の存続にも関わる可能性があります。
消費者への影響
異物混入は、消費者の健康に直接的な被害を与える可能性があります。硬い異物による口腔内の怪我や歯の損傷、消化器系の損傷、窒息事故などが挙げられます。また、アレルギー物質の混入は重篤なアレルギー反応を引き起こす危険性があります。身体的な被害だけでなく、精神的な苦痛や不信感も消費者に大きな影響を与えます。
企業への影響
異物混入が発覚した場合、企業は多岐にわたる悪影響に直面します。
まず、ブランドイメージの失墜と信頼の低下が起こります。一度失われた信頼を取り戻すには長い時間と多大な労力が必要です。次に、消費者の購買意欲が低下し、取引先からの信頼も失われることで、売上が大幅に減少する可能性があります。
さらに、製品の回収には多額の費用がかかり、消費者への賠償責任も発生する場合があります。食品衛生法違反として、行政からの指導や業務停止命令を受ける可能性もあります。
食品業界で検出すべき異物の種類
食品の安全性を確保するためには、製品に混入する可能性のある様々な異物を特定し、適切に管理・除去することが不可欠です。異物はその性質によって大きく「物理的異物」「化学的異物」「生物的異物」に分類され、それぞれ異なるリスクと検出方法が存在します。
物理的異物
物理的異物とは、食品中に本来存在しない固形の物質を指します。これらは消費者の口に入ることで、怪我や不快感、心理的な不信感を引き起こす可能性があります。
製造工程由来の異物
食品の製造・加工中に機械の摩耗や破損、作業具の劣化などによって混入する異物です。これらは製造ラインの点検やメンテナンスの不備、適切な管理体制の欠如が原因となることが多いです。
混入する可能性がある異物
・金属片
・プラスチック片
・ガラス片
・ゴム片
・木片
原材料由来の異物
食品の原材料に元々含まれているか、収穫・輸送・保管の過程で混入する異物です。原材料の受け入れ検査や前処理工程での選別が重要になります。
混入する可能性がある異物
・石、砂、土
・昆虫
・植物の茎、葉
人的要因による異物
作業員の不注意や衛生管理の不徹底によって混入する異物です。作業員の教育や服装規定、個人衛生管理の徹底が求められます。
混入する可能性がある異物
・毛髪
・爪
・アクセサリー
・衣類の繊維
化学的異物
化学的異物とは、食品中に残留したり、意図せず混入したりする化学物質を指します。これらは消費者の健康に直接的な悪影響を及ぼす可能性があり、特に注意が必要です。
有害な化学物質
製造工程で使用される化学薬品や、原材料に残留する可能性のある有害物質です。
混入する可能性がある異物
・洗剤、消毒剤
・潤滑油
・農薬
・重金属(鉛、カドミウム、水銀など)
アレルゲン物質
アレルギーを持つ消費者にとって健康被害を引き起こす物質です。食品表示法に基づき、特定原材料(卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに)および特定原材料に準ずるものの表示が義務付けられています。
混入する可能性がある異物
卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに、アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン
生物的異物
生物的異物とは、微生物や昆虫、小動物など、生物由来の異物を指します。これらは食品の腐敗や食中毒の原因となるだけでなく、消費者に強い不快感を与えます。
微生物
食品中で増殖し、食中毒や食品の品質劣化を引き起こす目に見えない異物です。原材料、製造環境、作業員の衛生状態など、様々な経路から混入します。
混入する可能性がある異物
・細菌(サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌O157、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌など)
・カビ、酵母
昆虫・小動物
工場や倉庫などの施設内に侵入し、食品に混入する異物です。衛生管理の不徹底や防虫・防鼠対策の不備が原因となります。
混入する可能性がある異物
・昆虫の糞や卵、死骸(ゴキブリ、ハエ、アリ、ダニなど)
・小動物の糞や毛、死骸
自社で異物混入検査を行うには
食品業界において、異物混入は企業の信頼を大きく損なう重大な問題です。自社で異物混入検査体制を構築し、運用することは、製品の安全性を確保し、消費者の信頼を守る上で不可欠です。効果的な検査を行うためには、まず自社の製造工程を深く理解し、潜在的なリスクを特定することから始める必要があります。
何がどこに混入するか考える
異物混入対策の第一歩は、製造工程全体を見直し、「何が」「どこで」混入する可能性があるのかを具体的に洗い出すことです。原材料の受け入れから製造、加工、包装、出荷に至るまでの各工程において、どのような異物が、どのような経路で製品に混入しうるかを詳細に分析します。この分析は、HACCPにおける危害分析の考え方と共通しており、物理的危害要因の特定に役立ちます。
異物の発生源は、主に以下のように分類できます。
原材料由来: 穀物に含まれる石、野菜の土、加工食品に混入するプラスチック片などが該当します。
設備由来: 製造機械の摩耗による金属片、パッキンのゴム片、潤滑油などが混入する可能性があります。
作業者由来: 作業着の繊維、毛髪、爪、アクセサリー、手袋の破片などが含まれます。
環境由来: 昆虫、ネズミ、塵埃、建材の破片などが挙げられます。
これらの潜在的な混入源を特定することで、効果的な予防策と検査ポイントを確立するための基礎を築きます。
自社に適した検査方法の選び方
異物混入検査の方法は多岐にわたり、自社の製品特性、生産規模、検出したい異物の種類、予算などに応じて最適なものを選ぶ必要があります。リスクアセスメントの結果に基づき、最も効果的かつ効率的な方法を選択することが重要です。
主な検査方法としては、目視検査、金属検出器、X線検査装置、ふるい分け、フィルター検査、画像認識システムなどがあります。例えば、金属異物の検出には金属検出器が有効ですが、石やガラス、骨などの非金属異物にはX線検査装置が適しています。
複数の検査方法を組み合わせることで、検出精度を高めることも可能です。重要なのは、検出したい異物の種類、製品の状態(液体、固体、粉末)、そして検査にかけられるコストと時間のバランスを考慮し、自社の製造ラインに最適なシステムを構築することです。
見えにくい異物を「見える化」することが重要
目視では発見が困難な微細な異物や、製品の内部に隠れた異物を検出するためには、「見える化」技術の活用が不可欠です。
代表的な「見える化」技術には、X線検査装置や金属検出器があります。X線検査装置は、製品を透過するX線の吸収率の違いを利用して、金属だけでなく、石、ガラス、骨、硬質プラスチックなどの非金属異物も検出できます。金属検出器は、電磁誘導の原理を利用して、製品中の金属異物を高感度で検出します。
さらに、画像処理技術を用いた検査システムも進化しており、製品の表面に付着した微細な異物や、形状の異常などを自動で検出することが可能です。
よくある質問
食品に異物が混入するとどんな問題がありますか?
消費者に対しては、怪我や食中毒などの健康被害を引き起こす可能性があります。企業にとっては、製品のリコール、ブランドイメージの低下、消費者からの信頼喪失、売上の減少、株価への影響、さらには行政指導や法的責任を問われるといった問題が発生します。一度失われた信頼を取り戻すには多大な時間とコストがかかるため、異物混入は食品企業にとって極めて深刻なリスクとなります。
HACCPによる異物混入対策は?
HACCP(ハサップ)は、食品の製造過程で発生しうる危害を分析し、重要管理点(CCP)を定めて継続的に監視・記録する衛生管理システムです。異物混入対策では、異物を「物理的危害」として位置づけ、原材料の受け入れから製造、出荷までの全工程で、異物混入のリスクが高いポイントを特定します。そして、金属検出器やX線検査機の設置、設備の保守点検、作業環境の整備、従業員の衛生教育などをCCPやOPRP(運用前提条件プログラム)として設定し、予防的な管理を行うことで異物混入を未然に防ぎます。
異物混入を防ぐ5つのキーワードは?
異物混入を防ぐための基本的な5つのキーワードがあります。
持ち込まない: 原材料の受入検査を徹底し、外部からの異物の持ち込みを阻止します。工場への入室時の服装規定や手荷物検査も含まれます。
発生させない: 製造設備や器具の定期的な点検・保守、清掃を徹底し、設備由来の異物(部品の破損、サビなど)の発生を防ぎます。従業員教育により、ヒューマンエラーによる異物発生も抑制します。
広げない: 異物が混入した可能性のある製品が、他の製品や工程に影響を与えないよう、作業区画のゾーニングや汚染拡大防止策を講じます。
見つける: 金属検出器、X線検査機、色彩選別機、目視検査など、適切な検査機器や手法を導入し、混入した異物を早期に発見します。
除去する: 検査で見つかった異物を速やかに除去し、異物混入が確認された製品は流通させません。また、原因究明と再発防止策を講じます。
まとめ
食品業界における異物混入検査は、消費者の安全確保と企業の信頼維持のために不可欠な取り組みです。本記事では、その目的から具体的な検査方法、検出すべき異物の種類、そして自社で検査を行う際のポイントまでを解説しました。
異物混入のリスクは多岐にわたり、HACCPなどの衛生管理システムと連携しながら、継続的な対策と改善が求められます。特に、肉眼では見えにくい微細な異物や、製品内部の異物を「見える化」する技術の導入は、検査の精度を向上させ、より安全な食品提供に貢献します。
消費者からの信頼を失わないためにも、最新の検査技術や管理体制を取り入れ、安全・安心な食品提供に努めることが重要です。
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